オフバランス化は、真実性の原則違反

ひところ、固定資産のオフバランス化が流行っていました。
その名残を、今も現場で見かけることがあります。

たとえば以前、
私が工場長として預かっていた現場に大きな乾燥炉が4台並んでいました。
3台は会社の固定資産でしたが、3号機だけがリース資産でした。

3号機を廃棄しようとした時になって初めて、私(工場長)はその事実を知りました。
そして、本来の所有者であるリース会社(装置を一度も見たことがなく、興味もない)に、3号機に関する情報や知識がなかったために、廃棄にとても苦労をしたのです。

それにしても、なぜ3号機だけがリース資産にされていたのか?
おそらくオフバランス化です。

オフバランス化というのは、
会社が使用し続けている固定資産を形式的にリースに切り替え、
社外資産とすることで、
固定資産の総額を見かけ上、圧縮するという会計処理です。

何のために、こんな面倒なことが行われていたのかというと、

固定資産総額を圧縮することで、
固定資産回転数(=売上高÷固定資産額)というKPIを良く見せることができるからです。
回転数は「高いほど良い」と言われます

当時は特段の規制もなく、
こうした会計処理ができる会計専門家が「優秀でスマートだ」と言われていました。

しかし、
実態が何も変わらないのに、見かけだけを操作して実態を見えなくしてきた専門家のメンタリティに疑問を感じました。

その後、事情が分からなくなってしまった経理部門が30年間も黙ってリース料を払い続けたことで、会社はずいぶん損をしたでしょう。

現在、こうしたオフバランス処理は規制されていますが、
会計専門家のマインドが「相変わらずだなぁ」と感じられる場面は今も多々あります。

例えば、
年間の本当の平均在庫はかなりの金額になっているのに、
期末日だけ在庫を圧縮して、在庫回転数を高めに見せるなどです。

開示会計において、数値を良く見せようとする努力の全てを否定するわけではありません。

しかし、
それがゆえに内部関係者や経営者が、自分自身の会社の実態を見失ってしまっているなら悲劇です。
それでは経営課題を把握し、手当てし、厳しい時代を生き残ることができません。

いま改めて、
会計専門家は「真実性の原則」に立ち帰り、自らが果たすべき責務について再考してみる必要があるのではないでしょうか?

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