簿記試験を超えて③ 可能性は1万分の1

それなりの覚悟ではじめたことでしたが、会計士試験の受験勉強は想像以上に壮絶なものでした。
入門期はともかく、基礎期に入ると指導校から送られてくる教材の量が急激に増えたのです。

10月に上級期に突入すると毎週のように巨大な箱が届くようになりました。
「いや、毎回凄い量ですねぇ。ちゃんとやり切れているんですかぁ?」
宅配便の方も呆れる程の量でした。
教材を消化するどころではなく、開封すら間に合わない箱がどんどん積み上がっていきました。

特に簿記に苦しみました。
初見で1時間以内に解くべき連結会計の問題が、解くのに3時間、解答を読むのに4時間、合計で7時間もかかっていたのです。
「ぜんぜん速度が足りない!」

模擬試験の成績は最低の「E」判定ばかり。
何から何まで分からないことだらけで指導校の授業を受けたいとも思いましたが、地方で仕事をしながらでは絶対に無理です。

「そもそも技術者が、たった一人で合格できるような試験なのだろうか?」

教材を取っていた指導校からは、こんな忠告を受けました。
「え、在職で通信ですか? しかも技術者でその年齢・・・。奇跡でも起きない限りそれじゃ合格は不可能ですよ。まったく前例がない」

「合格の確率は、経験と年齢でみれば1%、通信講座の方なら概ね1%ですから、全体では1%の1%くらいになってしまうでしょう。つまり1万分の1ってことです。本当に本気なら、会社を辞めて通学でやらなきゃ絶対無理です」

ネットの書き込みを調べても肯定的なコメントは1つもありません。
「通信じゃ無理、40代じゃ絶対無理」
「万が一合格してもどうせ監査法人には入れないのだから奇跡が起きても会計士になどなれはしない。
常識で考えれば分かるはず、云々」

私は絶望的な気持ちになりました。

それでも会計の勉強は素直に面白いと感じられました。
「正しい原価計算とは? そしてコスト管理の方法とは?」
「設備投資プロジェクトの正しい計画方法とは?」
「会社のあるべき姿とは・・・」

技術者時代には分からなかったこと、長年知りたいと願っていた知識がそこにありました。
少しでも多くの新しい知識を吸収して仕事に役立てていこうと私は心に決めました。

「誰もが合格は不可能だと言う。
でも学びたいから学ぶ。学ぶべきことだからこそ学ぶんだ!」

とはいえ、「1年分」の教材が「1年以内」にきちんと一巡できたのが漸く3年目でしたから、短答式試験の合格が3年目だったのは当然だったかもしれません。

「これが分からない!」
「あれも分からない!」
という混乱を徐々に脱し
「何が分からなかったから間違えたのか?」
が冷静に分析できるようになってからは急速に理解が深まるようになりました。

★24時間を3つに分けた。仕事8時間、生活8時間、明日への希望も8時間

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