先般のセミナーは「カイゼン会計」でした。
製造業の輝かしい歴史だった筈のカイゼンですが、今日では製造業衰退の直接原因になっている場面が多々あることをご存じだったでしょうか。
そもそも「カイゼン」は、生産効率を高め、現場の安全を確保するのために、従業員が自主的に行う活動のことです。
カイゼンが、カイゼンたる所以は、それが「自主的な活動」である点にあります。
そうでなければ、単なる業務指示ですから、カイゼンじゃないです。
そんなカイゼンが「素晴らしいことだ」とかつて私は素直に信じていました。
ですから某海外工場で「カイゼン反対ストライキ」に遭遇した時は、とても驚きました。
でも、作業者の方々の言い分を聞いて、「なるほどなぁ」と思いました。
先述の通り、カイゼンは「自主的」な活動ですから、会社からお金が支払われません。
それでも正社員の場合はまだ良いのですが、非正規の方に「カイゼンして」と指導すると、「タダ働き」の強要になってしまうんです。
ちなみに工場でストライキを起こした方々は形式上「日雇い」扱いされている方々でした。
どんなに頑張っても、何年頑張っても、決して正社員に登用されることはないのです。
こうした非正規や日雇いの方々の自主的な頑張り(タダ働き)に頼って業績回復を目指す経営は、幼稚ですし、
自主的な活動だった筈のカイゼンを、「やりなさい」と指示するのは意味不明・・・
そして数年後、今度は別の国内会社の、某工場で同様の事例に遭遇したので、工場長に尋ねてみたのです。
「非正規の皆さんに、正規と同じカイゼンを求めたらコンプラ違反になりませんか?」と。
工場長さんの答えは、こうでした。
「うちでは採用時に『正社員並に頑張ります』と約束してくれた非正規だけを採用している。だから何の問題も無い」
廊下に出ると、工場はシーンと静まりかえっていました。
それは、そこに何百人もの皆さんが働いていることが信じられないくらいに異常な静けだったと記憶しています。
会社が非正規や日雇いやアルバイトさんを正社員に登用しないのは、ある意味、必要な時だけ使って終わりにするためです。
そうしなければならない場面も確かにあるのかもしれない。
でも、そんな方々にカイゼンを要求するのはおかしい。
不公正な職場から、良いイノベーションは生まれはしません。
どうしてもカイゼンをやって貰いたいなら、まず正社員に登用すべきです。
どうしても登用できない事情があるなら、せめて、タダ働きであるカイゼンを強要してはいけない・・・
それは、経営として当然のけじめ。
変動労務費(コストの道)と固定労務費(資源の道)のけじめが大切だと思うのは、
そんな事例をたくさん見てきたからでもあるんです。
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