在庫回転数と流動比率の衝突

ある現場で、実地棚卸の準備が始まりました。

1週間も前から部材の購入を停止し、生産調整を実施。
すぐに売れる優良な在庫は投げ売りされるので、倉庫は不良在庫ばかりになります。

棚卸が終わると、今度は急速に在庫を回復させるのですが、
1週間程度は残業続きで大変です。

四半期ごとに前後1週間かけて圧縮するなら、年8週間の混乱です。
その間の販売機会損失も小さくありません。

仮に売上高が在庫量に比例する(在庫回転数が維持される)と考え、
在庫を圧縮することによる販売機会損失を見積もってみると、
棚卸日までに到達する在庫の圧縮量が50%なら、8週間で平均25%の売上機会を失うことになります。

年換算すれば4%の売上高の喪失です。

「これだけの犠牲を払って、なぜ在庫を減らすのですか?」
と尋ねると、
「いつもやっています」
「減らさないと怒られます」
「在庫はお金の塊、お金を寝かしてはいけません」
といったステレオタイプな答えが返ってきました。

でも、現場の皆さんはご存じないんです。

現場がどんなに在庫を減らしても、お金は寝かされているのです。
なぜなら、財務会計に「流動比率」や「当座比率」というKPIがあるからです。

これは、流動債務の何倍の流動資産があるかを問う比率。
例えば現場が50億円分の在庫を圧縮した場合、
経理財務部門は50億円分の当座資産を寝かすことになるでしょう。
そうしないと流動比率が維持できませんから。

期末の在庫(流動資産)を減らそうと頑張る現場、
その一方で、流動資産を増やそうと頑張る財務部門、
減らない不良在庫、投げ売りされる優良在庫、
失われる販売機会・・・

この悲劇的な潰し合いを終わらせるためには、
①在庫高の計算方法の見直し(期末在庫だけではいけない)
②在庫回転数の目標の見直し(高ければ良いわけではない)
③流動比率の目標の見直し(高ければ良いわけではない)
が必要です。

会計専門家の方々は、ぜひリーダーシップを発揮して、
在庫管理の新しいセオリーを見つけ出してください。
新しい管理会計を使って!

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