温暖化陰謀論を考える

1991年の夏、イタリア・アルプスで遭難者の遺体が発見されました。
警察が出動し遺体を回収すると、奇妙なことが・・・

遺留品が変だったのです。
青銅の斧や火打石、服装もなんだかおかしい・・・。

実は、彼(のちにアイスマンと呼ばれる)は5300年前の人でした。
何らかの理由で遺体が氷河の中に閉じ込められ、冷凍保存され、
1991年になって5300年ぶりに解凍されたのです。

この事件からも、
今日が5300年ぶりに暖かいのだということが実感されます。

「地球温暖化が起こっているのか?」
「起こっているとして、その原因はCO2なのか?」
「CO2を削減する必要はあるのか?」
いまだに陰謀説がくすぶっていて、社会の足並みは揃っていませんが、
今地球に何かが起こっているのは確かです。

ところで1932年(昭和7年)には、
宮沢賢治が「グスコーブドリの伝記」を発表しています。その中に、こんな会話があります。

「先生、気層のなかに炭酸ガスがふえて来れば暖かくなるのですか。」
「それはなるだろう。地球ができてからいままでの気温は、たいてい空気中の炭酸ガス(CO2) の量できまっていたと言われるくらいだからね」

利害が交錯していなかった時代、CO2が温暖化を引き起こすという因果関係が素直に受け止められていたことが分かります。
(当時は、東北の冷害を食い止めたいという期待から、肯定的に受け止められていたようです)

陰謀論とは・・・
既得権側から、「現状のままで、何もしなくて良い」という方向に向かって流されることが多いものだと感じます。

色々な主張はあってよいと思いますが、面白おかしく振り回される議論に惑わされず、各自が自分の力で考え、判断することが大切なのだと思います。

地球温暖化が心配だという話をすると、
「そんなの陰謀だ、温暖化なんて存在しない!(だからCO2なんて削減しなくてよい)」
という意見に、よくぶつかります。

昨今ではさすがに
「温暖化は存在しない!」という意見にぶつかることはやや少なくなりましたが、
「温暖化の原因はCO2じゃない!(だからCO2なんて削減しなくてよい)」
という意見にぶつかることが増えたように思います。

★実際に温暖化は起こっているのか?
まず温暖化の有無ですが、海洋の温度は確かに上昇しています。
実際に漁獲が変化していて、鮭が新潟で採れなくなったり、
ブリが北海道で採れたりしています。

海洋温度の上昇で、台風は熾烈になり、日本本土に近づくものも増えました。

海洋温度の上昇は、線状降水帯ももたらしています。
私は気象予報士ですが、受験当時(1999年)には線状降水帯という言葉が存在しませんでした。今では頻繁に発生し、各地で甚大な被害をもたらしています。

海洋が蓄える熱量は大気の1000倍。
今まで大気を冷やしていた海が、湯たんぽと化してしまいました。
すでに膨大な熱が、大気と海洋に蓄えられてしまっているのです。

★温暖化の原因はCO2なのか?
地球の気温は、約10万年周期で変動しています。
10万年周期で10℃近い気温ジャンプが繰り返されてきた原因は、地球軌道の微妙な変化だとされており、CO2ではありません。しかし小さな軌道の変化が、大きな気温の変化になってきた原因はCO2だった可能性があります。

直近では、約1万年前に、この気温ジャンプが起こって氷河期を終わらせました。自然のサイクルに従えば、これから次の氷河期に向かって、10万年かけて10℃気温が下がるはずでしたが(100年で0.01℃)、産業革命以来、100年で1℃を超える急速な気温上昇が起きているのは異常な事態です。

★それでは、CO2を削減すべきなのか?
残念ながら世界協調が破綻しつつあるという現実もあります。温暖化防止は手遅れかもしれません。
ですから、今後のCO2削減への取り組み方については賛否両論あるところだと思います。

ただし、確実に言えることが2点
①温暖化を論じる以前に、化石燃料が急速に枯渇に向かっており、その意味で脱炭素の達成はMUST。
②脱炭素社会は、現状の社会の延長にはなく、エネルギーが使えるうちに抜本的な構造変化を完了させておくことが必要。この構造変化の実施段階では、CO2が相当量排出されるという状況も想定される。

私は(温暖化を案じる気象予報であり、省エネを推進するエネルギー管理士ですが)、
「地球のため温暖化防止のために化石燃料の使用を削減しましょう」
という呼びかけ方をしていません。

私の呼びかけは、資源の枯渇と価格暴騰に備えること。
日本が自立して時代を生き抜くいていくための脱炭素の提案です。

都合が良かろうと、悪かろうと、事実は事実。
ビジネスも環境保護も、しっかり事実に向き合って活動しなければ大惨事になります。

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