簿記試験を超えて⑥ 私が生まれ変わった日

いよいよ再び試験本番が迫った2007年4月17日の早朝のこと、私は会社の研究所で三猿の絵のおみくじを拾いました。

思わずそんなものを拾い上げてしまったのは、それがちょうど2年前に鎌倉で貰ったおみくじと同じ絵柄であり、自分が落としたもののような気がしたからです。しかもその場所は、毎朝の簿記の勉強場所にしていた会議室の前でした。

でも、それは別の真新しいおみくじでした。

再び試験を目前にして、前回と同じおみくじを、毎日の勉強場所で拾ってしまったという偶然に少し動揺しましたが、今度は思いきって直ぐ開封してみました。

するとこんなことが書いてありました。

「難しい問題や困難に立向う時は心理的に不安な状態がつづくものだがあなたは大丈夫。
たとえ虎の尾を踏むような危険を冒してもかならず目的を達することができるようになります。
信頼できる経験者のことばをよく聞き、参考にすることがこの際は大切。
笑顔を忘れずに全力をあげて事に当るとよい。

【学業・技芸・試験】着実に今の努力を続ければかなり難しいと思われる目標でも到達できる」

不思議な出来事ではありましたが、この言葉を私は文面通り受け取ってみようと思いました。
苦しい時期でもあり、とても励まされたからです。

論文試験の直前には、1日24時間のうち、勉強10時間、会社8時間、食事と入浴と睡眠が合計で6時間、という生活に移行していました。

この頃、勉強時間がは累計で1万時間を超えました。体重が半年で8kgも減っていて、いつもオールAだった春の健康診断では、この年に限って
「肺に影がある。要・精密検査」
といわれたのです。

「激しい受験勉強の末に、私はとうとう死ぬのだろうか?」

会計士受験は私の秘かな挑戦でした。
新しい知識が会社で嫌われることを怖れて、誰にも受験のことを話していなかったのです。それでも保健室の先生にだけ事情を打ち明けると、先生はすぐ再検査の手続を取って下さいました。レントゲン写真の入った大きな封筒を診察室まで運ぶ時、手が震えました。

幸い結果はシロでした。
試験を目前にして、私は生まれ変ったのだと感じました。
それは公認会計士論文試験の1ヶ月前のできごとです。

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