物価高騰や超円安で苦しむ会社が増えました。
輸出型の大企業はともかくも、素材を購入しなければならない中小企業は大変です。
そのうえ昨今ではCO2の削減まで求められます。
物価やCO2との戦い(ひっくるめてコストダウンと呼びますが)では、
1.合理的な目標を決めること
2.目標と実績の比較をすること
3.大きな原価差異が生じていれば、手当てをすること
が基本になります。
・・・そんなことは本来、当然のことのはず。
しかし今日の会計の姿を見る時、
その「当然」がきちんと実行されているとは思えない現状があります。
まず、
そもそもP/Lには売上原価や販管費の内訳が示されていませんし、
(その一方で、妙に細かい営業外費用が列記されていたりする)
ましてや原価差異は全く不明だからです。
工業簿記2級くらいで習うことですが
原価差異は、価格差異と数量差異に分けて把握しなければなりません。
計算式は、こんな感じ。
価格差異=(目標価格-実際価格)×実際使用量
数量差異=目標価格×(目標使用量-実際使用量)
分けて把握するのは、それぞれの責任部署が異なるからです。
価格差異なら購買部門の活動をチェック、
数量差異なら消費部門の活動をチェックしなければなりません。
差異を示さないと
1.差異がなかったのか
2.差異を把握していなかったのか
3.差異の目標管理をしていなかったのか
が分かりません。
誤った活動があっても修正されず、コストが垂れ流しになってしまいます。
それにもかかわらず(!)原価差異が示されたP/Lを見たことがありません。
(2013年頃までは稀に見かけました)
ということは・・・
各社とも原価差異を垂れ流しているということなのでしょうか?
もちろん、公表されているP/Lは、外部開示の会計(見せる会計)ですから、社内できちんと原価差異が把握され、対策されているなら問題ありません。
しかし現実には社内でも把握されていないのではないかと想定されるケースが多々あるように思います。
その理由の一つは、やはり工業簿記2級あたりで指導される原価計算です。
例えば標準原価計算の問題では、
材料費の不利差異と労苦費の有利差異を相殺消去するといった処理が正解として示されますが、ちょっと酷いなと感じます。
材料費の差異と労務費の差異は原因も管理部門も違うのですから、それぞれ異なる管理が必要です。
有利差異と不利差異を相殺したら、何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのか分かりません。
また原価計算で当然の常識として指導されてきた合計転記ですが、これでは売上原価の内訳が分からなくなってしまいます。
内訳が分からなければ、どの費用の負担(材料費なのか労務費なのか経費なのか)が重いのか分かりませんし、価格高騰等のシミュレーションを試みることもできません。
こうした問題に不便を感じてこなかった専門家や指導員の方々の本気に疑問を感じますし、それが私が40歳で会計士を志した一つの理由でもありました。
厳しい経営環境ですが、本当に本気になれば、まだまだやれること/やるべきことはたくさん残っているのだということを、ご理解いただければと思います。
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