制約理論で有名な「ザ・ゴール」の冒頭で、
「企業の最大の目的は何か。それは利益を出すことである」という一節があります。
「なるほど!」と言わなければいけない場面ですが、私にはちょっと違和感がありました。
「企業の最大目的は、利益を出すことではない!」
というのが私の考えです。
利益でないなら、何が目的なのか?
答えは「WACC」です。
WACC(加重平均資本コスト)という言葉を御存じだったでしょうか?
B/Sの右側(資金の調達方法を示す)を見れば明らかですが、
会社の資本は、他人資本(≒銀行からの借り入れ)と
自己資本(≒株主の出資)から成り立っています。
他人資本は返済期限と利息が約束されている代わりに経営参加権がありません。
自己資本は返済期限と利息が約束されない代わりに経営参加権があります。
これが大まかに見た時の他人資本と自己資本の違いなのですが、
昨今では「会社所有と経営の分離」の進行によって、両者の違いがかなり曖昧になってきています。
★自己資本の他人資本化
「所有と経営の分離」によって経営に関心がない株主が増えた。
それに伴って、無議決権株式、償還株式、優先株式などが発行されるようになっている。
★他人資本の自己資本化
借り換えの繰り返しや、役員派遣などによって、銀行等が経営参加する場面が増えた。
ですから、自己資本と他人資本の区別が曖昧になり、両者の資本コストを一体的に管理すべきだという考え方が生まれてきたのです。
それがWACC(加重平均資本コスト/ワック)です。
例えば、
B/S上の他人資本が100億円(調達金利6%)、
自己資本が100億円(要求リターン12%)だとするならば、
WACCは9%になります。
実際には、実績より少し高めの値を目標とするので、
ここでは目標WACCを10%くらいに設定することになるでしょう。
因みに、この会社の総資本(他人資本+自己資本)は200億円ですから、
全体で20億円(=200億円×10%)の資本コストを稼ぎ出さなければならないということになります。
「利益」とは自己資本に関わるリターンのみを指す言葉ですが、
「WACC」は他人資本と自己資本の全体に関わるリターンを指す言葉だという違いがあります。
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