減価償却の危険性

減価償却って、何でしょう?
あまりに常識になっていますが、案外とわからない存在です。

先般、専門サイトでこんな説明を見つけました。
「何年も使える固定資産を購入した時、一括で経費計上すると、その年の経費が膨大になり、赤字になってしまうので、ゆっくり減価償却する」

この説明、とても怖いと思いませんか?
「赤字になると困るから、数字操作して黒字に見せます」
なんて、まるで不正じゃあないですか(それが合法的だとしても)。
会計専門家が、そういう意識でいるなら困ります。

では、減価償却って何なのか?

例えばIFRS(国際会計基準)では、
「経済的便益の消費パターンを反映するよう減価償却する」
ことが求められますが、合理的な消費パターンについて
実地に指導してくれる会計専門家はなかなかいません。

実は、生産技術の世界ですら、
合理的な消費パターンの追求に失敗しているのです(例えば予防保全)。
技術者にできない消費パターンの追求が、会計専門家にできるのでしょうか?

そもそも、償却年数を決めることがとても難しい。
ある新しい装置を買った場合を考えてみてください。
✔先代機は20年も使ってしまった。
✔新しい装置の性能は10年保証されている。
✔税法では8年償却を要求されている。
✔設備投資計画では5年は使う想定になっている。
✔2年後に画期的な新型機が発売されるから、買い替えたくなるかも。
こんな場合、何年が合理的な償却期間だと言えるのでしょう?

「決められない」というのが真実なのでは?

もちろん、償却期間が20年から2年になれば
毎年の減価償却費は10倍も動いてしまいます。

更に毎年/毎月の稼働率でも減価償却の配賦単価は動きます。
1000台生産予定だったものが100台に留まれば
減価償却費は再び10倍動いてしまう。

先ほどの償却期間と併せれば100倍も動いてしまう減価償却費は
1円1銭のコストダウンの成果を台無しにし、
原価計算を台無しにします。

実際、いくらでも操作は可能。
無理に減価償却すれば恣意的になり、会計数値の信頼性は損なわれていきます。

しかも、費用の繰り延べになって
使いすぎたリボ払いみたいな埋没原価になったり
事業が窮地に陥った時に爆発する減損爆弾になったりします。

減価償却って、本当に恐ろしい・・・

まあ、「赤字になってしまうので、ゆっくり減価償却しましょう」
なんて説明されてきたくらいですから、
会計数値の信頼性が担保されるはずもなかったのですが・・・

こうした状況から導かれる結論は、
減価償却の本質は「経済的便益の消費パターンの反映」などではなく、
むしろ「税法上の方便」として割り切るべきものだということでしょう。

最も恣意性がなく安全で、経済的実態に近い減価償却方法は、おそらく即時償却です。

特注仕様で発注された生産設備の大半は
使用開始と同時にスクラップ価値でしか処分できなくなるケースが多いからです。

実際に即時償却を行う場合には(もちろん管理会計上の話ですが)、
①1割程度の処分価格を残して一気に償却、
②備忘価格1円残して全額償却、
③転売市場がある場合は転売可能と想定される価格まで一気に償却、
などからの選択が想定されます

もちろん、その期は赤字(管理会計上の)になってしまうかもしれませんし、
バランスシート(管理会計上の)には欠損金が生じるかもしれません。
でも、それが会計的真実なのです。

経営は、それでも実施すべき設備投資なのかを慎重に判断しなければなりません。
(例えばIRRなどを使って)
いい加減な会計処理に乗っかって、後から後悔する前に!

関連記事

RELATED POST

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


PAGE TOP
MENU
お問合せ

TEL:080-2090-1172

(月 - 金 9:00 - 18:00)