年金や退職金が目減りする、本当の理由

長年、自己資本比率は50%を超えるべきだと言われてきましたが、
専門サイトの説明文に
「自己資本比率が低いと、金利負担が重くなるから。
自己資本比率が低いと、返済しなければならないから」
といったものを見かけることがあり、気になっています。

これって、「自己資本=返済不要で金利もないタダ金」
と読めますが、そこには大変な誤解がありました。

実は、「自己資本≒株主資本」であり、
他人資本よりも高コストな資金だからです。

なぜ自己資本が高コストかと言えば、
自己資本の元になる株式投資の出資者は、
出資に対する利子も元本も保証されていないからです。

ただし、このハイリスク・ハイリターンの出資の見返りとして
経営参加権(例えば株主総会への出席)が認められています。
リスクに見合うリターンが無ければ、
経営責任が厳しく問われるというのが、本来の資本主義の姿です。

それにも関わらず、「自己資本=タダ金」だと思われがちなのは
他人資本の場合は、銀行等の取り立てが厳しいのに対して、
自己資本の場合は、物言わぬ株主が多いからかもしれません。

自己資本が軽く扱われている状況は、
いわゆる損益分岐点が「利益±0」の所に設定され、
それ以下は赤字、それ以上は黒字
とされてきたことにも現れています。

本当は、「利益±0」ではなくて、
自己資本に要求されるリターンまで達成して、
漸く黒字(経営責任を果たした状態)といえるはず。

報道でも、「会社の内部留保が多いので従業員に還元せよ」
といったコメントがされることがありますが、
内部留保は会社のタダ金ではなく、株主のお金。
それが適切に事業で運用され、適切なリターンを達成できているなら
内部留保が多いこと自体はなんら問題がありません。
(っていうことが、認識されていないように感じられます)

因みに、株主といっても
必ずしもどこかの大富豪のことを意味するわけではありません。
年金や退職金の運用をしている私たちも株主です。

会社が、「自己資本=タダ金」だと思い込んで
緊張感を欠いた経営を行えば、
回り回って、年金も退職金もどんどん目減りしていくんです。
少子化のせいだけではありません・・・

こうした誤解と経営活動の失敗を解消するには
自己資本(自己資本比率)という言い方を止めて
株主資本等(株主資本等比率)で統一すべきだと思います。

そもそも「自己資本」という表現は
会社の所有と経営の分離が進んでいなかった時代の産物であって、
昨今の会社の姿を、正しく示せていないからです。

もちろんこれらは、
利害の交錯する財務会計(外部会計)の話ではなく、
あくまでも
管理会計(内部会計)の世界の話ではありますが。

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