ある会社で「カイゼン手帳」なるものが配られました。
すぐに開いてみると、1ページ目には
「人間尊重」とありました。
その言葉に期待を込めて2ページ目に進むと、期待は打ち砕かれました。
そこには、こんなことが書いてあったからです。
「人間尊重の心
人間は尊い存在です。
だから1分1秒も人生を無駄にしてはならない。
だから究極の生産性を実現し、
1分1秒も無駄なく、人生を製品に変えましょう」
私には、
これが人間を尊重するメッセージには思えませんでしたし、
どんな意図であれ、
こんなメッセージを書いた手帳を配ることが
作業者の方々のモチベーションアップにつながるとは思えませんでした。
この出来事から、
日本の製造業の凋落に繋がる幾つかの問題点を抽出することができます。
第一に、このメッセージは無神経で稚拙です。
このメッセージを受け取った方々の思いに対する配慮が足りません。
第二に、このメッセージは曖昧です。
究極の生産性とはどんなものなのか?
仮に1分1秒無駄なく製品を作っても、それが赤字製品なら生産性はゼロです。
第三に、このメッセージは間違っています。
今日の仕事に無駄なく100%集中できてしまったら、
その会社は明日滅びるでしょう。
なぜなら、
今日の仕事は、今日の価値を作る時間、
今日の無駄は、明日の価値を創る時間だからです。
無駄な時間こそがイノベーションを生むのです。
そして、無駄を無駄で終わらせず、本当のイノベーションの時間に変えていくためには、
一人一人が真に人間として尊重され、真に納得して頑張れる風土を作り上げなければなりません。
実は・・・
今まで日本の製造業が、こうした「真の人間尊重」に向かえなかった一つの理由が、
従来の財務会計のP/Lの形にあると言ったら驚かれるでしょうか。
今日の財務会計は約100年前にデザインされたものですが、
当時は、大量生産方式の黎明期で、あちこちの工場で激しい労働争議が起きていました。
そんな工場労働者を、どれだけ無駄なく作業に向かわせられるかという命題が、
ブルーカラーとホワイトカラーという区分を生み、
売上原価(実質的に製造原価)と販管費の分断を生んだのです。
言い換えれば、売上原価と販管費が分断されたP/Lを使い続けている限り、
真の人間尊重はあり得ず、イノベーションも活発にはならないでしょう。
会計が古ければ、ビジネスの発想も古いまま。
そろそろ、会計を進化させるべき時機がきているのです。
会計は、より良き明日に向かって経営を支えるツールです。
会計を変えれば、会社が変わり、きっと社会も変わります。
会計は、絶対不変の掟などではないのです。
さあ会計を、変えましょう!
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