テレワークに現れた、2つの管理の違い

人の管理には2つの方法があります。

<方法1>
達成すべき目標を明確にし、達成の手段は本人の自主性に任せる。
評価は目標の達成度に基づいて行う。

<方法2>
着席時間や在席時間を監視する。
評価は時間の長短で行うものの、その間に何を達成したかは積極的には問われない。

<方法2>は、定型作業の管理に向いています。定型作業を担うと想定されるのは、主に変動労務費の方々。アルバイト的や日雇い的な働き方が想定されます。私はこれを「コストの道」の管理と呼んでいます。

これに対して
<方法1>は、非定型作業(創造的業務)の管理に向いています。非定型作業を担うのは、固定労務費の方々です。製造部門/非製造部門を問わず、正社員の方々に期待される働き方です。私はこれを「資源の道」の管理と呼んでいます。

ところで、今までの国内製造業で多かったのは圧倒的に「コストの道」の管理でした。実際、ほとんどの会社で、正社員が勤務時間の長短で管理されています。長時間働けばお金がたくさんもらえる、残業すればお金がもらえる、という仕組みが常識になっています。でも、その時間に何をしていたかは殆ど問われません。

しかし本来、「資源の道」の対象であるべき正社員を「コストの道」で管理すると、主体的な姿勢が損なわれ、自覚やモチベーションを失っていくことになります。

こうした現状が強く顕在化したのが、コロナ禍の最中に多くの会社で試みられたテレワークでした。テレワークを導入する段階になって初めて、会社は人をどのように管理していくのかというテーマに真剣に向き合うことになったのです。

本来テレワークは、「コストの道」ではなく「資源の道」に馴染む勤務形態です。会社を離れてしまえば、日々のルーチン業務を回していくためのインフラが使えないからです。何をしているかの監視の目も行き届きません。それにも関わらず「資源の道」の管理に不慣れだった国内各社は、テレワークを「コストの道」で管理しようと試みました。そしてしばしば実践されたのが、PCの前に何時間座っていたかを監視するといった管理だったのです。

しかし、ルーチン業務のインフラすら揃っていない状況下では、「コストの道」で行うテレワークは成功しませんでした。PCの前に何時間座っていたかを監視されても退屈なだけで、良い成果が生まれるはずもありません。

結果的にコロナ禍が一段落すると、テレワークを発展させて「資源の道」に挑戦するというチャンスを放棄し、日々職場で行う「コストの道」の管理に退行してしまった会社が多いようです。

ここで「退行」と書いたのは、実は、正社員が職場で勤務時間に縛られ勤勉に働いているように見えても、何も成果が上がっていない(会社の業績が向上しない)ケースが少なくいないからです。

日本の高度成長期からバブル期にかけて「コストの道」の管理はそれなりに成果を上げてきました。会社も個人もやるべきことは明確で、現状の作業(定型作業)をさらに効率よく実行することにだけ集中すればよかったからです。

しかし今日では、定型作業はロボットやAIが担うようになりました。正社員に求められるのはむしろ非定型作業(創造的業務やイノベーション)です。ですから各社は発想を転換し「資源の道」の管理に挑戦していかなければなりません。例えば、午前中にやるべきことをやってしまったら、午後は自由に帰れるといった働き方ができるのが「資源の道」の管理のイメージです。一人一人は勤務時間ではなく、何を成し遂げたかで評価されることになります。

「達成すべき目標を、いちいち設定できません。評価も無理」という意見もありますが、それは経営の放棄に等しいです。各自が達成すべき目標すらきちんと設定できないという状況が、どれほど異常なものかということを、私たちは知らなければなりません。

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