コストハーフ、やればできる?

だいぶ前になりますが、
私があるモノづくりの現場を責任者として預かった時、
その現場では、既にあるコストダウン・プロジェクトが進行中でした。

曰く
「原価30%低減。私たちは『できない』とは言いません!」

でも、私はそれを見て心配になりました。

その現場の製品原価の90%以上が材料費で、しかもその材料は客先指定なので勝手に変更できません。
歩留まりが悪いわけでもない(ほぼ100%)。

だとすれば、30%のコストダウンの余地はどこにあるのか?
不安に駆られた私は、指導員の方に伺ったのです。

「私もこの現場を預かる以上は、目標を必達したいです。
ですから原価30%低減という目標を設定した時の、目論見をご教示ください」

すると、いきなり指導員が怒り出しました。

「原価の内訳がどうのこうのと屁理屈をいうから、コストダウンが成功しないのです。
本気でやれば誰だって30%くらいのコストダウンはできるものです。
理屈を言う間があったら、1円でも2円でもコストを下げなさい」

私は、少し苦言を述べました。

現状の原価の内訳が、何費と何費と何費で(材料費、労務費、経費など)、
それぞれが現状どのくらいの割合で、
それぞれについてどのくらいのコストダウンの余地があるのかを検討しなければ、活動は成功しません。

否、活動が成功したのか? 失敗したのか?
どの部分が成功し、どの部分が失敗したのかすら検証できないでしょう。

実は、原価の内訳すら見ない精神論的な目標設定が非常に多いです。
「コストハーフ、やればできる!」
「コストハーフ、1回やれば50%減、2回やれば75%減です!」

それくらいは分かりますが、どうやって50%に取り組むのか?
(脱炭素の46%削減や100%削減も、こうした目標設定に似ています)

原価の内訳すら見ない一律の目標設定は、責任関係が曖昧で、目標がないのと同じなのです。

ところで先ほどの指導員の方ですが、早速、私のことを報告に行ったようです。
「やる気のない責任者が来たので、目標は達成されそうもありません」
「けしからん!」

なんだか、初めから落としどころが決まっていたような気がします。
私は、早々にその現場を後にしました。

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